ダブルケアカフェに参加してきました(令和6年12月1日)

 

ページ番号1097815  更新日 令和6年12月1日 印刷 

「すぎラボ」は杉並区で子育て中のママライター・パパライターによるコンテンツです。

子育てと親や親族の介護を同時に担う状態を「ダブルケア」と呼んでおりますが、担う方にとっては、子育て、介護、仕事のタスクを膨大に抱えている状態となります。子どもの育児に目を向けたいと望んでも、親の介護や仕事もあり子どもに向き合う時間が少なくなるジレンマを抱える人も少なくありません。また、多忙な親を身近にみている子どもも気を使い、子どもが我慢して、「登校しぶり」やメンタル的なサポートが必要になるケースもあります。 
今回、ダブルケアを担う方が子育てと介護と仕事を両立するために、社会支援整備を目指している「NPO法人こだまの集い」が主催、ケア24方南が共催している「ダブルケアカフェ」が開催されると聞き、参加してきました。ダブルケアカフェの様子とともに、実際に悩んでいる方々に、どのようなサポートが行なえるのかも含めてレポートします。

ダブルケアカフェについて

会場に到着

店内の写真
会場のカフェミスポンヌ店内

杉並区和泉にあります、カフェミスポンヌというおしゃれな喫茶店で開催されました。カフェ運営の関係者が集合する中、相談に来られたのは、ミドル世代の男性1名、女性1名でした。

カフェ開設の経緯

代表の室津さんの写真
こだまの集い代表の室津さん(左手前)

カフェの司会進行で参加している「NPO法人こだまの集い」代表の室津さんに、カフェ開設に至った経緯を聞かせてもらえました。 
「はじめは、武蔵野大学と連携をして行ったダブルケア調査のご報告をケア24方南さんにさせていただいた流れで、ご一緒に取り組みが出来ないかと意見交換を行ったことがはじめになります。多世代が子育てと介護のそれぞれについては語れる場があっても、複数のケアが重なった先の相談先や語れる場所は日本の中にはほとんどありません。子育ても介護も重なった時に、自分たちの経験を語り合いながら、どの様に乗り切っていけるか話し合える場所を作りたいと思ったのが、ダブルケアカフェの運営の動機です。」

カフェが始まりました

初めに簡単な自己紹介を行い、相談者の悩みを聞き始めていきました。女性の方が介護と子育ての両面での家庭事情を話しながら、辛い心情を吐露してくれました。私も少し離れた席からお話を聞いていて、一人で長い期間、思い悩んでいたんだなと、その辛い気持ちが伝わってきました。
男性の方は、昼夜にわたる介護で疲労しつつ、子育に関する悩みもあり、私も介護体験がありますので、大変な思いは汲み取れました。それぞれに悩みを、ケア24方南とこだまの集いスタッフの皆さんが一緒になって、しっかりと聞き取り、どのような対応ができるのか、今後の取り組みについて話し合っていました。

悩み事をカードゲームで整理

そんな中で興味を持ったのが、ダブルケアカフェで使われているカードゲーム「ダブルケア366」でした。子育て・介護・仕事のよく起こりがちなマルチタスクを、優先順位をつけながら自分自身の価値観を見える化するためのカードゲームです。
参加者のお二人も、このカードに悩み事を書いて、優先順位について関係者の皆さんと会話しながら整理していました。

カードの写真
カフェで使用した優先順位カード
作業の写真
カードに悩みを書いて整理していきます

カフェに参加している全員で話し合っているうちに、相談者二人の様子も和らいでいくのがわかりました。多くの人が悩んでいる話を聞いてくれる、という貴重な場だなと実感しました。

参加者の年代と抱えている課題

カフェに参加している方の年代としては、30代・40代が中心のようで、抱えている主な課題は以下3点になります。

経済的課題

子育てや介護(サービス利用料・交通費など)もお金がかかるため、ケアで時間が取られるが仕事もしていくために、どの様に両立をすれば良いか課題感を感じている方は多い。

身体的・メンタルの疲弊感 

子育ても介護も仕事もとなると、身体的な疲労感が多い。介護のため夜も眠れない。という声もきかれます。身体的な疲労に伴い、メンタルも落ちていく場合もありますが、相談する先も縦割りで支援に結びつかない。心身ともに疲弊している中で、更に支援を受けられずに孤立化してしまうケースも少なくない。

都心部の特徴

遠距離介護のケースが多く、地方に住む親の介護が本格化した時に、子育てや仕事の生活拠点は都内ですが、どの様に両立の環境を整えたら良いのか、という課題があります。

カフェに参加するメリット

カフェに参加するとどのようなメリットがあるのかを、こだまの集いの室津代表に聞いてみました。
室津代表:
自分の体験を話せることで、気持ちが軽くなるとお話くださる方も多くいます。 
知らず知らずのうちに、抱え込んでしまっているケアラーさんの気持ちも、似た状況にある方のお話を聞くことで、視野が広がった、参考になるアイデアを受け取ったと感じてくださる方もいらっしゃいます。 

記憶に残るエピソード 

和やかな雰囲気の写真
悩みを一緒に考えていく中で和やかな雰囲気に

室津代表:
妊娠中の方でダブルケアカフェにお越しくださった方が、産後に生まれた赤ちゃんを連れて参加してくださったケースが複数あります。(お腹にいた赤ちゃんは、2歳になった今も時々ママと一緒にダブルケアカフェに顔を出してくださいます。) 
ご夫婦、並びに介護が必要な親御さんの担当ケアマネさんとご参加してくださったケース。担当ケアマネさんより、介護の部分は分かるけど、子育てのことはわからないからと情報を求めにご参加くださいました。

ダブルケアへの取り組みについて

杉並区の取り組み

杉並区では「ダブルケア」に関しては、内容によってさまざな部署が関わるため、ダブルケアだけの相談に特化した所管部署はありませんが、区の取り組みとして「誰もが気軽に利用できる福祉と暮らしのサポート拠点」をコンセプトとしているウェルファーム杉並が、さまざまな活動をしていますので、悩みの内容に応じて、問い合わせてみてはいかがでしょうか。

ケア24方南での取り組み

ダブルケアカフェ共催のケア24方南 関根センター長に話をうかがいました。
すぎラボ:
カフェ参加者様に対して、ケア24方南では、どのようなサービス・サポートを提供する事が可能なのでしょうか。(区との連携も含めて) 
ケア24方南:
参加されるダブルケアラーさんそれぞれのお困りごと・お悩みに合った介護方法、認知症状への対応方法、各種制度や相談窓口等のご案内、利用・活用のご提案等をしています。 区のみでなく、東京都の制度や民間のサービスについての情報提供をすることもあります。 
しかし、ダブルケアラーさんのお困りごとやお悩みは介護についての事だけではありませんし、私たちも高齢者分野以外の制度の詳細が分からない事も多々あります。
私たちから他分野の専門職へもお声掛けをしているので、ダブルケアラー支援に興味のある他分野の方が支援者として参加される時は、別分野からの助言を得ることもできます。 また、サポートという程大げさではありませんが、ただただ気持ちを吐き出したい、家族や友人に言えずに苦しく思っていることを聞いてほしい思いもおありでしょうから、しっかりと傾聴をすることもあります。
孤軍奮闘していると思っているダブルケアラーさんに、少し周りを見てみたら、あなた自身の事を心配している人が産業保健や母子分野、高齢分野、障害分野、教育分野や法曹界に至るまで、全員ではなくても実はあちこちにいますよ、という事が伝わったら嬉しいと思います。

ダブルケアの解決方法

ダブルケアに対処するにはどうしたら良いのかを、室津代表に聞いてみました。
ダブルケアは、マルチタスクであり子育て・介護・仕事のスケジュールの調整が肝になるとの事です。

介護を優先的に調整

ダブルケアのケースによっても異なりますが、一般的な打開策は介護の部分を優先的に調整することです。介護に関しては、地域の相談窓口として「地域包括支援センター(ケア24)」があります。介護の制度やサービスは、複雑でかつ地域により異なる場合があります。早期に介護のプロにつながることで、介護体制をスムーズに整えることができれば、親の状態が安定して過ごせる時間も長くなることが期待できます。その分、現役世代であるダブルケアラーは子育てや仕事に目を向けられる可能性があります。

子育て分野においても相談先をみつけておく

子どもの対象年齢により異なりますが、未就学児であれば子どもの通う保育園や幼稚園。また子育て支援センターなどにお子様の心配事や教育環境の整え方などでアドバイスをいただけるのではないかと思います。

仕事を属人化させない

ダブルケアは、タスクが山積みになりがちなので、子どもや親の状態が急に必要になった場合も想定して、お仕事も同僚の方に引き継ぎやすい体制を整えていけると良いかもしれません。ダブルケアと仕事の両立を目指す人の中には、職場に日常会話の中で子育てや親の介護のことをさり気なく話をしながら、いざとなったときに周囲に理解をしてもらいやすいような環境を意識されているケースも聞きます。

ダブルケアカフェの今後の抱負

すぎラボ:
ケア24方南では、今後、ダブルケアカフェをどのように運営されていくのか、将来の抱負も合わせてお聞かせください。
ケア24方南:
当面の間は、NPOだけが主、地域包括支援センターだけが主、当事者や地域で思いのある人だけが主、という運営の仕方ではなく、現在の様な協働・共催での運営の方が双方に一定の繋がりを保ち続けられる上、お互いのウィークポイントを補い合い、強みを活かして運営ができる理想的な形だとは思います。
ですが、将来的にはこういった場自体があちこちにあることが当たり前の世の中になり、他分野の専門職や民間企業と当事者、地域のカフェと他分野の専門職や民間企業・当事者等、ダブルケアラーの近くにいるさまざまな主体がこういった場を提供し、個と世帯・ゆりかごから墓場までを、誰かだけ・どこかだけに負担がかからない形で支えていける相互理解が進んでいくと良いなと思っています。 よろしくお願いいたします。
室津代表:
子育てと介護が当たり前の時代、現役世代がもっと自由に働く、やりたいことを諦めない選択肢を持てる社会を実現したい。私たち「こだまの集い」が、多世代の交流のお手伝いをし、さまざまな選択肢を提案できる存在になっていきたいです。

カフェに参加してみて

店内の写真
ダブルケアカフェ、素敵な場ですね

カフェに参加された相談者お二人も、悩みを打ち明けて、助けとなる情報を得て、今後の道筋にも光が見えてきたこともあり、穏やかな表情で帰宅されていきました。
子育てと介護という2つの課題が重なった場合には、ダブルケアカフェのような複数の関係者が連携して、相談者の悩みを一緒に考える仕組みが必要と思いました。

すぎラボライター とーちゃん

 

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