知っていると知らないとでは大違い、産後クライシスを乗り越えるコツ(令和2年10月15日)

 

ページ番号1062322  更新日 令和4年6月27日 印刷 

「すぎラボ」は杉並区で子育て中のママライター・パパライターによるコンテンツです。

知り合った当初はあんなに仲良しだったのに、子どもが生まれてからはパートナーにイライラしてばかり…。どうしてわかってくれないのだろう、どうしてやってくれないのだろう…。パートナーにそんな風に感じてしまうことはありませんか?
実はそれ、産後クライシスが原因かもしれません。
産後クライシスは風邪などへの対処方法と同じように、知識が身を助ける分野です。
今回は産後クライシスとは何か、どのようにパートナーとの関係を考えていけば良いか、夫婦の関係性コーチングを行っている平田香苗さんにお話を伺ってきました。

平田香苗さんの写真

平田香苗さん紹介
2008年プロコーチとして独立。自身のパートナーとの問題に悩んでいた頃、組織と関係性のコーチングに出会い、自分と同じように夫婦関係に悩み、「相手選びを間違ったのか」「自分が悪いのか」と考える多くの夫婦にこの知恵を届けるべく活動を続ける。
米国CTI 認定プロフェッショナル・コーアクティブ・コーチ、CRR グローバル認定 組織と関係性システムコーチ、「結婚生活を成功させる7つの原則プログラム」認定エデュケーター。

産後クライシスとは

産後クライシスとは、それまで仲の良かったカップルが、出産を機にお互いへの愛情が大きく落ち込み、その後回復せず、関係性がどんどん悪化していくことを言います。
産後クライシスを引き起こすきっかけには、大きく次の3点が挙げられます。

経験のない子育てに対する意見の違いの顕在化

初めての子育ては、それまで経験のない大量のタスクを瞬時に判断して行わなければいけないものですが、多くのカップルがパートナーとあまり相談する時間を持つこともできないまま、目の前のタスクを消化することだけを考えてしまうことがあります。そうした中で、お互いのやり方に違和感を覚えながらも、それを解消できないまま不満だけが大きくなりがちです。

親密さの変化

出産前はお互いに気遣っていた2人でも、出産と同時に24時間赤ちゃんの世話に追われ、パートナーに気配りできなくなり、攻撃的になったり、自分を防御することばかり考えたりしてしまいがちです。
そうした状況が発生しても、その後、お互いの考えや気持ちを伝え合うことができれば、ギクシャクした関係を修復できたのに、子育てに追われる毎日の中で、そうした時間も取ることができず、そのまま時間が過ぎてしまうと、2人の溝がどんどん深まってしまうということが起きてしまいます。

子育てに関する役割の問題

例えば、オムツ替えの作業は、オムツを選ぶ・買う・自宅まで運ぶ・どれくらい濡れたら替える・お尻を拭く・在庫を把握する・どれくらいになったら買い足す…など、実はさまざまな要素があります。
このように、パートナーが認識していないタスクがあり、それを自分だけがやっていると考えてしまうと、負荷のバランスが崩れたと感じ、関係がギスギスしてしまいがちです。

関係改善のために

大切なことは、2人がチームとして育児という難局をいかに乗り越えていくか、なのですが、出産を終え、赤ちゃんのお世話でバタバタの毎日の中で、もしパートナーに不満を感じることが増えたら、ぜひ次のことを実践してみてください。

自分を振り返る

日々のパートナーとの会話を意識してみましょう。あなたの言葉や態度の中に、

  • 非難
  • 侮辱
  • 防御
  • 逃避・無視

といった要素が多く含まれていないでしょうか。
これらの言葉や態度は、相手を傷つけ関係性を悪化させるだけで何も生みません。こうした言葉や態度はできるだけ避け、言葉を選んで話すようにしましょう。
また、相手に求めてばかりではなく、あなた自身もパートナーの気持ちを害していることがあるかもしれないと認識しましょう。

お互いを認め合う

あなたは、あなたのパートナーがどんなものが好きか・嫌いか、どんな夢や悩みを持っているかなど、お互いに関する情報をたくさん知っているでしょうか。
それは、幼い頃の親友に対するものと変わりません。
パートナーとたくさん会話し、パートナーの“今”のことを、たくさん知るように努めましょう。

パートナーの大切なものに敬意を持つ

パートナーの大切なものを知っても、自分も同じように好きにはなれない…。それでも大丈夫です。大切なことは、お互いの世界観にあるお互いの大切なものに、敬意を持って接せられるかどうか、です。

自分の感情を上手に消化する方法を見つける

普段の生活の中で、どうしても腹が立ったり、イライラしてしまったりすることはあるものです。しかし、自分の中に生まれた負の感情の原因は自分の中にあり、パートナーが自分の感情の原因となる訳ではありません。
例えば、大好きな食べ物をパートナーに食べられて腹が立った時ですが、その食べ物が好きな人は怒るけれど、その食べ物が嫌いであれば腹は立ちません。つまり腹が立つ原因は自分の中にあり、“自分が”こんなにその食べ物が好きだから腹が立ったと考えることで、自己共感ができ、感情の消化を進めることができます。
相手が悪いと考えてしまいがちですが、パートナーが取った行動と、自分の感情とはぜひ切り離して考えましょう。自分の感情は、自分で選択することができます。

パートナーに直してほしいことがある時

もし、パートナーに直してほしいと思うことがある時は、まず、それが本当に必要なことか、もう1度考えてみましょう。
例えば、洗濯物を畳んでいなくても、食器に少し汚れが残っていても、日々の生活に大きな問題はないかもしれません。
どうしても直してほしい場合、パートナーにどのように言ってほしいか聞いてみましょう。決して毒づかず、相手を傷つけずに伝える方法があるはずです。
また、リクエストをしてもすぐに直るものではありません。気長に待つことも大切です。

気をつけておきたいこと

あるアメリカの調査では、約7割のカップルが、出産後3年以内に結婚生活が幸せとは感じなくなったと明らかにしています。
今、パートナーとの関係で悩んでいるとしてもそれは決してあなただけでなく、多くの人が直面していることでもあるのです。

2人の関係性は変化するもの

出産や子どもの独立、自分やパートナーの転職・離職など、家族に関するライフイベントが発生すると、2人の関係性は変化するものであり、元のままではいられません。
大切なことは、こうしたライフイベントが発生するごとに、この先2人でどんな人生の物語を描いていくか、お互いにとって良い人生を歩めるように、2人でよく話し合うことです。

家事・育児に取り組むということ

家事・育児の多くは女性がするもの、という考えがまだ根強い部分があります。それは歴々と受け継がれてきた、思考の習慣ともいえるものです。
しかし、今、この時代に、この家庭の中で、2人でどうしていくか、をパートナーとよく話し合い、どんなタスクがあるか明確化し、2人で納得した上で分担し合いましょう。
また、最近は育休を取る男性もずい分と増えてきました。しかし、普段やっていない家事・育児に突然取り組むのは難しいものです。
育休を取る際には、パートナーとどんな育休にしたいか、2人にとってどういう時間にしたいか、よく話し合ってみましょう。

パートナーとの関係を維持するための工夫

あなたは、あなたのパートナーが何をされると嬉しいか、知っていますか?
誕生日や結婚記念日などを大切に祝ってほしいという人もいれば、日々のボディタッチを大切にしたいという人、日々の何気ない会話が大切、という人もいます。
大事なことは、これだと思い込んで独りよがりにならず、パートナーと話し合うことです。
そして、“ちょっとしたことを頻繁にする“ということもコツの1つです。

相手を変えても問題は起こる

どうしてもパートナーとの関係が改善できずに、離婚などの選択をすることも致し方ない場合もあります。
しかし、“夫婦の間で起こる問題の内、69パーセントは解決されずに繰り返される”という研究データがあります。これはつまり、もし今のパートナーと性格や価値観が合わず他のパートナーを選択し直しても、ほとんどの場合、同じように問題は起きるという事実を示しています。
ですから、問題は起こるという認識を持ち、そうした問題に対して、パートナーと解決策を話し合ったり、上手に付き合っていったりすることが、幸せな生活を送るコツです。

取材を終えて

出産・育児は、それまでパートナーと2人で築き上げてきた大切なものが、1度全て崩れ去るものなのかもしれません。でも、そこからまた2人で新しい関係を作り上げていくことは、長い2人の人生においては素敵なことなのではないかと感じました。
それは決して、出会った頃のようなトキメキはないけれど、育児や家事に共に取り組む、強力な“戦友”としての新しい2人の関係なのかもしれません。
そして平田先生のアドバイスのとおり、危機は1度ではありません。
でも、1度乗り越えられたら、次もきっと乗り越えられるし、その時はパートナーに対して、きっとより厚い信頼と愛情を感じられるのではないかと期待してやみません。

すぎラボライター あらゆ。

 

このページに関するお問い合わせ

子ども家庭部管理課庶務係
〒166-8570 東京都杉並区阿佐谷南1丁目15番1号
電話:03-3312-2111(代表) ファクス:03-5307-0686