ありがたくない冬の風物詩「ノロ」「ロタ」に備えておこう その1「杉並区保健師インタビュー編」(平成29年10月1日)

 

ページ番号1035999  更新日 令和4年6月27日 印刷 

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赤ちゃんを抱いている母

冬になるとやってくる、ありがたくない風物詩「感染性胃腸炎」。
こどもが3人いる我が家では、ひとりが貰ってくると一家全滅の憂き目にあうことも珍しくはありません。夜中にインターネットを検査すれば、色々な情報は出てくるものの、ものによって言ってることが違ったり、「どこまで信じていいの? 赤ん坊の脱水判断基準なんか素人には区別付かないよ。」とスマホやパソコンを投げつけたくなったパパ・ママは、私のほかにもいたのではないでしょうか。

そんな「感染性胃腸炎」の代表格である「ノロ」「ロタ」について、杉並保健所保健予防課の保健師さんにお話を聞いてきました。

そもそもノロ、ロタって何なのでしょうか?

まず冒頭にもあります「感染性胃腸炎」ですが、これはさまざまな細菌、ウイルス、寄生虫などに感染することによって起きる嘔吐や下痢などの胃腸炎を指します。その中のウィルスによる感染性胃腸炎の代表が「ノロウイルス」、「ロタウイルス」になります。
ノロは主に秋から冬、ロタは主に冬から春にかけて流行することが多いのですが、最近は一年を通して発症が報告されています。

数年前くらいにノロの新型がニュースで騒がれていたように思うのですが、最近そういった傾向など何か気になる動向はあるのでしょうか。

平成27年に発生したノロウイルス食中毒では、今までに検出されなかった新しい遺伝子型のウイルスが発見されました。ノロについては常に変異を繰り返しているので、変異株によって流行しやすい、ということはあるかもしれません。

ノロとロタ、何か大きな違いはありますか?

ノロもロタもおう吐や下痢など基本症状はほぼ同じで、看病ですべきこともほぼ同じですが、あえて違う点を述べるならば、下記のようになると思います。

 

ノロ

ロタ

流行時期             

秋~冬が多い。 冬~春が多い。                         
感染ルート ウイルスの経口感染による。 ウイルスの経口感染による。                           

潜伏期間

1~2日 2~4日

症状

おう吐から始まることが多い。 下痢から始まることが多い。
便が白っぽいことが多い。
対応 脱水症状に気を付けて症状が過ぎ去るのを待つ。(ただし乳児や脱水が疑われる場合は悩まずすぐに受診を。) 脱水症状に気を付けて症状が過ぎ去るのを待つ。(ただし乳児や脱水が疑われる場合は悩まずすぐに受診を。)
発症期間 おおむね数日 おおむね1週間
重症化 比較的軽症で終わりやすい。 比較的重症化しやすい。
発症しやすい年齢 全年齢
変異しやすい型がある。
5歳までの乳幼児
抗体ができるので大人は発症しにくい、または軽い症状のケースが多い。
その他 ウイルス自体は体外で10日は生きる。
また、症状が治まった後もしばらくはウイルスが便に排出される。
ウイルス自体は体外で10日は生きる。
また、症状が治まった後もしばらくはウイルスが便に排出される。

よくある感染ルート、意外な感染ルートについて教えてください。

ウイルスを持っている人が触ったものを別の人が触り、そのまま口を触ってしまう、食事するなどによる経口感染が一番多いです。とくにドアノブとか、幼児の場合は保育園や幼稚園で共有している玩具など注意したいですね。また、ノロやロタのウイルスは人体外でも10日は生きると言われていて、きちんと処理をしなかったおう吐跡や、処理に使ったタオルなどから乾燥後に菌が空中を舞ってしまい、それを吸い込むことで感染した事例などもあります。

また、ノロの場合は、二枚貝などウイルスのついた食物をきちんと加熱(85℃ 1分以上で死滅)しないで食べた場合に感染することもありますので、注意が必要です。

とにかく、感染予防的にはこまめな手洗いが一番です。受験生のいる家庭など絶対に家に菌を持ち込むわけにはいかない理由などがある場合には、身近なものやドアノブなど、手が触れる場所はこまめに消毒しておくと良いかもしれません。

ただ、一般的な消毒石鹸やアルコール消毒液ではウイルスは死滅しませんので、できれば塩素系漂白剤を薄めた消毒液(原液ではなく0.02%程度に薄めたもの)を利用してください。

塩素系漂白剤を使った消毒液の作り方(ハイター、ピューラックス使用の場合)

  • 0.1%液
    500ミリリットルのペットボトルの水にキャップ2杯の塩素系漂白液
    (嘔吐物や便などで汚れた物の消毒)
  • 0.02%液
    2リットルのペットボトルの水にキャップ2杯の塩素系漂白液
    (よく触れるドアノブ、蛇口、玩具などの消毒)

(注)作成後は冷暗所に保存し、早めに使い切りましょう(長期間は持ちません)。
(注)希釈後の液の場合でも扱う際は手袋をしましょう。

それでは次に、発症した場合の看病方法や病院へ行く目安など教えていただけますでしょうか

ノロとロタについては、何か特効薬があるわけではないので、基本は脱水に気を付けながら症状が過ぎ去るのを待つしかありません。

脱水を避けるためには水分を取るしかないのですが、無理に何かを飲ませても胃を刺激して吐き続けるだけになってしまいますので、スプーン1杯ずつですとか、胃をあまり刺激させないよう様子を見ながらあげるようにしてください。また、できればただの水よりもOS-1やポカリスエットといった経口補水液の方が体内の電解質バランスの面からも良いのですが、お子さんによってはこれらの味を嫌う可能性もありますので、その場合は無理せず、麦茶ですとか、普段飲み慣れている好きなものをあげれば良いと思います(柑橘系や炭酸など胃に刺激を与えるものは避けましょう)。なお、経口補水液が自宅に無いときは、水と砂糖と塩とレモンで自作することも可能ですので、インターネットなどを参考にお子さん好みの味に自分で作ってみるのも良いかもしれません。

注射を持つお医者さん

病院へ行く目安ですが、小さいお子さんの場合は小児科が開いている日中のうちに一度診ていただく方が良いと思います。ネットなどでは、薬があるわけではないので脱水しなければ家で寝ている方がいい等と書かれていることもありますが、小さいお子さんの場合は重症化する危険性も高いですので、いつもと様子が違うなと思ったら悩まず小児科を受診してください。

また、ネットなどでは脱水の見分け方として「目がくぼんできたら」とか「手の皮膚に張りがなくなってきたら」などと書かれていますが、実際それを見分けるのは難しいこともあります。それから、夜間診療所の当番医が小児科に詳しいとは限りませんので、できればギリギリまで待たずに、早めに小児科できちんと受診されて、今後の対応や別の病気の可能性などを見ていただくことをおすすめします。

なおロタについては、5歳までにはほぼ全員が一度は感染しており(発病しない場合もある)、多少の免疫が付いているため重症化はしにくいというデータもありますので、小学生以上のお子さんで意識がハッキリしているようであれば、ご自宅で様子を見ていただいてもいいかもしれません。

ノロ、ロタの看病でつきもののおう吐物の処理方法などについて、何か良いアイディア等ありましたら教えてください。

おう吐物には大量の菌が含まれていますので、単にきれいに片づけるということではなく、きちんと菌を退治する必要があります。一番良いのはおう吐物が付いたものや発症者が触ったものを全部捨ててしまうことなのですが、実際にはそういう訳にはいきませんよね。ですので、極力菌を拡散しないよう適正な処分をする必要がありますので、下記手順を参考にしていただければと思います(消毒液の作り方については感染ルートの項参照)。

  1.  使い捨てのマスクや手袋で自分が菌を取り込まないよう防御する。
    (出来れば足カバー(ビニール袋と輪ゴムでOK)やガウンなども羽織るとなお良い)
  2. おう吐物は外側から内側へ集め、押し込まないようつまむ感じですくいとる(そのまま即ごみ袋へ)
  3. おう吐面全体を覆うようにペーパータオル等を敷き、0.1%程度の塩素系漂白剤消毒液をふりかけ、10分後に撤去。その後薬剤成分を水拭き等でふき取る。
    (素材によっては脱色する可能性があるので注意)
  4. 衣類・タオルについては、トイレや洗面所でおう吐物を流した後、0.02%程度の塩素系漂白剤消毒液につけて消毒、その後洗濯機で洗濯をする。
    (洗濯機槽自体の菌による汚染を防ぐためにも消毒してからの洗濯がおススメ)
  5. 片付けに使った洗面やトイレ周り、触ったドアノブなどを0.02%程度の塩素系漂白剤消毒液で濡らしたティッシュ等でふき取り殺菌する。
  6. 1.のマスクや手袋なども全てゴミ袋へ入れ、0.1%程度の塩素系漂白剤消毒液をゴミにしみこむ程度に入れてから、空気を押し出さないよう(菌が噴き出す)ゴミ袋の口をしばる。

なお、服やカーペットなどの消毒に塩素系漂白剤液を利用した場合、どうしても生地の脱色などが起きてしまいます。どうしてもそれが嫌だとか、場所的に使えないなどの理由がある場合は下記の方法でも菌を死滅させることが出来ます。ただ、高温利用のため結果的にはやはり素材が傷む可能性が高いので、やはり使える範囲は限られてくると思います。

  • 85度以上の高温水にひたす(内部まできちんと温度を上げ、1分以上温度を保つこと)。
  • 高温のアイロンを2分以上あてる(内部まできちんと温度を上げること)。

最後に、流行時期の前にやっておくと良いことなどありましたら教えてください

まずは菌を持ち込まないということが第一なのですが、幼稚園にしろ会社にしろ、集団生活をしている以上、完全には防げません。
免疫も、ロタについてはある程度獲得できますが、ノロについてはそれも難しいため、とにかく外から帰ったら手を洗う、食事の前に手を洗う、ということをこまめに行ってください。
出来れば手を洗ったあとに使うタオルはひとりひとり別にするか、ペーパータオルなど使い捨てのものを用意されたほうがいいですね。

また、ロタウイルスには二種類(単価と5価)のワクチンがあり任意で接種することができます。接種期間は単価ワクチン(2回接種)は生後6~24週の間、5価ワクチン(3回接種)は生後6~32週の間です。
杉並区ではロタワクチンの予防接種について費用の一部を助成しています。(受けられる期間が非常に短いため、下記区サイトで詳細をご確認ください)。

あとは、これは発症してしまった場合に対しての対策になるのですが、バケツにビニール袋、新聞紙、マスクや手袋、塩素系漂白剤、空のペットボトルなどをセットにして置いておくと良いかもしれません。ノロやロタはいきなりのおう吐や下痢から始まりますので、始まってからアレコレ用意している間に菌が広がってしまう可能性もありますので、いざという時サッと処理ができるよう、シーズン前にセットにしてあると助かると思います。
 

終わりに

太陽に万歳

色々とお話しを聞けて、大変参考になりました。必要以上に恐れる必要はないとは思いますが、これからの流行シーズン、子どもたちには今まで以上に手洗いうがいをきちんとさせたいと思います。

すぎラボライター 晶姐

 

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