文化財関係法規 文化財保護法(抄)

 

ページ番号1007823  更新日 平成31年2月5日 印刷 

昭和二十五年五月三十日
法律第二百十四号

第一章 総則

(この法律の目的)
第一条 この法律は、文化財を保存し、且つ、その活用を図り、もつて国民の文化的向上に資するとともに、世界文化の進歩に貢献することを目的とする。

(文化財の定義)
第二条 この法律で「文化財」とは、次に掲げるものをいう。
一 建造物、絵画、彫刻、工芸品、書跡、典籍、古文書その他の有形の文化的所産で我が国にとつて歴史上又は芸術上価値の高いもの(これらのものと一体をなしてその価値を形成している土地その他の物件を含む。)並びに考古資料及びその他の学術上価値の高い歴史資料(以下「有形文化財」という。)
二 演劇、音楽、工芸技術その他の無形の文化的所産で我が国にとつて歴史上又は芸術上価値の高いもの(以下「無形文化財」という。)
三 衣食住、生業、信仰、年中行事等に関する風俗慣習、民俗芸能、民俗技術及びこれらに用いられる衣服、器具、家屋その他の物件で我が国民の生活の推移の理解のため欠くことのできないもの(以下「民俗文化財」という。)
四 貝づか、古墳、都城跡、城跡、旧宅その他の遺跡で我が国にとつて歴史上又は学術上価値の高いもの、庭園、橋梁、峡谷、海浜、山岳その他の名勝地で我が国にとつて芸術上又は観賞上価値の高いもの並びに動物(生息地、繁殖地及び渡来地を含む。)、植物(自生地を含む。)及び地質鉱物(特異な自然の現象の生じている土地を含む。)で我が国にとつて学術上価値の高いもの(以下「記念物」という。)
五 地域における人々の生活又は生業及び当該地域の風土により形成された景観地で我が国民の生活又は生業の理解のため欠くことのできないもの(以下「文化的景観」という。)
六 周囲の環境と一体をなして歴史的風致を形成している伝統的な建造物群で価値の高いもの(以下「伝統的建造物群」という。)
2 この法律の規定(第二十七条から第二十九条まで、第三十七条、第五十五条第一項第四号、第百五十三条第一項第一号、第百六十五条、第百七十一条及び附則第三条の規定を除く。)中「重要文化財」には、国宝を含むものとする。」
3 この法律の規定(第百九条、第百十条、第百十二条、第百二十二条、第百三十一条第一項第四号、第百五十三条第一項第五号及び第六号、第百六十五条並びに第百七十一条の規定を除く。)中「史跡名勝天然記念物」には、特別史跡名勝天然記念物を含むものとする

(政府及び地方公共団体の任務)
第三条 政府及び地方公共団体は、文化財がわが国の歴史、文化等の正しい理解のため欠くことのできないものであり、且つ、将来の文化の向上発展の基礎をなすものであることを認識し、その保存が適切に行われるように、周到の注意をもつてこの法律の趣旨の徹底に努めなければならない。

(国民、所有者等の心構)
第四条 一般国民は、政府及び地方公共団体がこの法律の目的を達成するために行う措置に誠実に協力しなければならない。
2 文化財の所有者その他の関係者は、文化財が貴重な国民的財産であることを自覚し、これを公共のために大切に保存するとともに、できるだけこれを公開する等その文化的活用に努めなければならない。
3 政府及び地方公共団体は、この法律の執行に当つて関係者の所有権その他の財産権を尊重しなければならない。

第四章 埋蔵文化財

(地方公共団体による発掘の施行)
第九十九条 地方公共団体は、文化庁長官が前条第一項の規定により発掘を施行するものを除き、埋蔵文化財について調査する必要があると認めるときは、埋蔵文化財を包蔵すると認められる土地の発掘を施行することができる。
2 前項の規定により発掘を施行しようとする場合において、その発掘を施行しようとする土地が国の所有に属し、又は国の機関の占有するものであるときは、教育委員会は、あらかじめ、発掘の目的、方法、着手の時期その他必要と認める事項につき、関係各省各庁の長その他の国の機関と協議しなければならない。
3 地方公共団体は、第一項の発掘に関し、事業者に対し協力を求めることができる。
4 文化庁長官は、地方公共団体に対し、第一項の発掘に関し必要な指導及び助言をすることができる。
5 国は、地方公共団体に対し、第一項の発掘に要する経費の一部を補助することができる。

第五章 史跡名勝天然記念物

(現状変更等の制限及び原状回復の命令)
第百二十五条 史跡名勝天然記念物に関しその現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をしようとするときは、文化庁長官の許可を受けなければならない。ただし、現状変更については維持の措置又は非常災害のために必要な応急措置を執る場合、保存に影響を及ぼす行為については影響の軽微である場合は、この限りでない。
2 前項ただし書に規定する維持の措置の範囲は、文部科学省令で定める。
3 第一項の規定による許可を与える場合には、第四十三条第三項の規定を、第一項の規定による許可を受けた者には、同条第四項の規定を準用する。
4 第一項の規定による処分には、第百十一条第一項の規定を準用する。
5 第一項の許可を受けることができなかつたことにより、又は第三項で準用する第四十三条第三項の許可の条件を付せられたことによつて損失を受けた者に対しては、国は、その通常生ずべき損失を補償する。
6 前項の場合には、第四十一条第二項から第四項までの規定を準用する。
7 第一項の規定による許可を受けず、又は第三項で準用する第四十三条第三項の規定による許可の条件に従わないで、史跡名勝天然記念物の現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をした者に対しては、文化庁長官は、原状回復を命ずることができる。この場合には、文化庁長官は、原状回復に関し必要な指示をすることができる。

第六章 補足

第三節 地方公共団体及び教育委員会
(地方公共団体の事務)
第百八十二条 地方公共団体は、文化財の管理、修理、復旧、公開その他その保存及び活用に要する経費につき補助することができる。
2 地方公共団体は、条例の定めるところにより、重要文化財、重要無形文化財、重要有形民俗文化財、重要無形民俗文化財及び史跡名勝天然記念物以外の文化財で当該地方公共団体の区域内に存するもののうち重要なものを指定して、その保存及び活用のため必要な措置を講ずることができる。
3 前項に規定する条例の制定もしくはその改廃又は同項に規定する文化財の指定もしくはその解除を行つた場合には、教育委員会は、文部科学省令の定めるところにより、文化庁長官にその旨を報告しなければならない

(地方債についての配慮)
第百八十三条 地方公共団体が文化財の保存及び活用を図るために行う事業に要する経費に充てるために起こす地方債については、法令の範囲内において、資金事情及び当該地方公共団体の財政状況が許す限り、適切な配慮をするものとする。

(都道府県又は市の教育委員会が処理する事務)
第百八十四条 次に掲げる文化庁長官の権限に属する事務の全部又は一部は、政令で定めるところにより、都道府県又は市の教育委員会が行うこととすることができる。
一 第三十五条第三項(第三十六条第三項(第八十三条、第百二十一条第二項(第百七十二条第五項で準用する場合を含む。)及び第百七十二条第五項で準用する場合を含む。)、第三十七条第四項(第八十三条び第百二十二条第三項で準用する場合を含む。)、第四十六条の二第二項、第七十四条第二項、第七十七条第二項(第九十一条で準用する場合を含む。)、第八十三条、第八十七条第二項、第百十八条、第百二十条、第百二十九条第二項、第百七十二条第五項及び第百七十四条第三項で準用する場合を含む。)の規定による指揮監督
二 第四十三条又は第百二十五条の規定による現状変更又は保存に影響を及ぼす行為の許可及びその取消し並びにその停止命令(重大な現状変更又は保存に重大な影響を及ぼす行為の許可及びその取消しを除く。)
三 第五十一条第五項(第五十一条の二(第八十五条で準用する場合を含む。)、第八十四条第二項及び第八十五条で準用する場合を含む。)の規定による公開の停止命令
四 第五十三条第一項、第三項及び第四項の規定による公開の許可及びその取消し並びに公開の停止命令
五 第五十四条(第八十六条及び第百七十二条第五項で準用する場合を含む。)、第五十五条、第百三十条(第百七十二条第五項で準用する場合を含む。)又は第百三十一条の規定による調査又は調査のため必要な措置の施行
六 第九十二条第一項(第九十三条第一項において準用する場合を含む。)の規定による届出の受理、第九十二条第二項の規定による指示及び命令、第九十三条第二項の規定による指示、第九十四条第一項の規定による通知の受理、同条第二項の規定による通知、同条第三項の規定による協議、同条第四項の規定による勧告、第九十六条第一項の規定による届出の受理、同条第二項又は第七項の規定による命令、同条第三項の規定による意見の聴取、同条第五項又は第七項の規定による期間の延長、同条第八項の規定による指示、第九十七条第一項の規定による通知の受理、同条第二項の規定による通知、同条第三項の規定による協議並びに同条第四項の規定による勧告
2 都道府県又は市の教育委員会が前項の規定によつてした同項第五号に掲げる第五十五条又は第百三十一条の規定による立入調査又は調査のための必要な措置の施行については、行政不服審査法による不服申立てをすることができない。
3 都道府県又は市の教育委員会が、第一項の規定により、同項第六号に掲げる事務のうち第九十四条第一項から第四項まで又は第九十七条第一項から第四項までの規定によるものを行う場合には、第九十四条第五項又は第九十七条第五項の規定は適用しない。
4 都道府県又は市の教育委員会が第一項の規定によつてした次の各号に掲げる事務(当該事務が地方自治法第二条第八項に規定する自治事務である場合に限る。)により損失を受けた者に対しては、当該各号に定める規定にかかわらず、当該都道府県又は市が、その通常生ずべき損失を補償する。
一 第一項第二号に掲げる第四十三条又は第八十条の規定による現状変更又は保存に影響を及ぼす行為の許可 第四十三条第五項又は第八十条第五項
二 第一項第五号に掲げる第五十五条又は第八十三条の規定による調査又は調査のため必要な措置の施行 第五十五条第三項又は第八十三条第二項
三 第一項第六号に掲げる第五十七条の五第二項の規定による命令 同条第九項
5 前項の補償の額は、当該都道府県又は市の教育委員会が決定する。
6 前項の規定による補償額については、第四十一条第三項の規定を準用する。
7 前項において準用する第四十一条第三項の規定による訴えにおいては、都道府県又は市を被告とする。
8 都道府県又は市の教育委員会が第一項の規定によつてした処分その他公権力の行使に当たる行為のうち地方自治法第二条第九項第一号に規定する第一号法定受託事務に係るものについての審査請求は、文化庁長官に対してするものとする。

(出品された重要文化財等の管理)
第百八十五条 文化庁長官は、政令で定めるところにより、第四十八条(第八十五条で準用する場合を含む。)の規定により出品された重要文化財又は重要有形民俗文化財の管理の事務の全部又は一部を、都道府県又は指定都市等の教育委員会が行うこととすることができる。
2 前項の規定により、都道府県又は指定都市等の教育委員会が同項の管理の事務を行う場合には、都道府県又は指定都市等の教育委員会は、その職員のうちから、当該重要文化財又は重要有形民俗文化財の管理の責に任ずべき者を定めなければならない。

(修理等の施行の委託)
第百八十六条 文化庁長官は、必要があると認めるときは、第三十八条第一項又は第百七十条の規定による国宝の修理又は減失、き損もしくは盗難の防止の措置の施行、第九十八条第一項の規定による発掘の施行及び第百二十三条第一項又は第百七十条の規定による特別史跡名勝天然記念物の復旧又は減失、き損、衰亡もしくは盗難の防止の措置の施行につき、都道府県の教育委員会に対し、その全部又は一部を委託できる。
2 都道府県の教育委員会が前項の規定による委託に基づき、第三十八条第一項の規定による修理又は措置の施行の全部又は一部を行う場合には、第三十九条の規定を、第九十八条第一項の規定による発掘の施行の全部又は一部を行う場合には、同条第三項で準用する第三十九条の規定を、第百二十三条第一項の規定による復旧又は措置の施行の全部又は一部を行う場合には、同条第二項で準用する第三十九条の規定を準用する。

(重要文化財等の管理等の受託又は技術的指導)
第百八十七条 都道府県の教育委員会は、所有者(管理団体がある場合は、その者)又は管理責任者の求めに応じ、重要文化財、重要有形民俗文化財又は史跡名勝天然記念物の管理(管理団体がある場合を除く。)、修理もしくは復旧につき委託を受け、又は技術的指導をすることができる。
2 都道府県の教育委員会が前項の規定により管理、修理又は復旧の委託を受ける場合には、第三十九条第一項及び第二項の規定を準用する。

(書類等の経由)
第百八十八条 この法律の規定により文化財に関し文部科学大臣又は文化庁長官に提出すべき届書その他の書類及び物件の提出は、都道府県の教育委員会を経由すべきものとする。
2 都道府県の教育委員会は、前項に規定する書類及び物件を受理したときは、意見を具してこれを文部科学大臣又は文化庁長官に送付しなければならない。
3 この法律の規定により文化財に関し文部科学大臣又は文化庁長官が発する命令、勧告、指示その他の処分の告知は、都道府県の教育委員会を経由すべきものとする。但し、特に緊急な場合は、この限りでない。

(文部科学大臣又は文化庁長官に対する意見具申)
第百八十九条 都道府県及び市町村の教育委員会は、当該都道府県又は市町村の区域内に存する文化財の保存及び活用に関し、文部科学大臣又は文化庁長官に対して意見を具申することができる。

(地方文化財保護審議会)
第百九十条 都道府県及び市町村の教育委員会に、条例の定めるところにより、地方文化財保護審議会を置くことができる。
2 地方文化財保護審議会は、都道府県又は市町村の教育委員会の諮問に応じて、文化財の保存及び活用に関する重要事項について調査審議し、並びにこれらの事項に関して当該都道府県又は市町村の教育委員会に建議する。
3 地方文化財保護審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、条例で定める。

(文化財保護指導委員)
第百九十一条 都道府県の教育委員会に、文化財保護指導委員を置くことができる。
2 文化財保護指導委員は、文化財について、随時、巡視を行い、並びに所有者その他の関係者に対し、文化財の保護に関する指導及び助言をするとともに、地域住民に対し、文化財保護思想について普及活動を行うものとする。
3 文化財保護指導委員は、非常勤とする。

(事務の区分)
第百九十二条 第百十条第一項及び第二項、第百十二条第一項並びに第百十条第三項及び第百十二条第四項において準用する第百九条第三項及び第四項の規定により都道府県が処理することとされている事務は、地方自治法第二条第九項第一号に規定する第一号法定受託事務とする。

第七章 罰則

(刑罰)
第百九十六条 史跡名勝天然記念物の現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をして、これを減失し、き損し、又は衰亡するに至らしめた者は、五年以下の懲役もしくは禁錮又は三十万円以下の罰金に処する。
2 前項に規定する者が当該史跡名勝天然記念物の所有者であるときは、二年以下の懲役もしくは禁錮又は二十万円以下の罰金もしくは科料に処する。
第百七条の三 次の各号の一に該当する者は、二十万円以下の罰金に処する。
一 第四十三条又は第八十条の規定に違反して、許可を受けず、もしくはその許可の条件に従わないで、重要文化財もしくは史跡名勝天然記念物の現状を変更し、もしくはその保存に影響を及ぼす行為をし、又は現状の変更もしくは保存に影響を及ぼす行為の停止の命令に従わなかつた者
二 第五十七条の五第二項の規定に違反して、現状を変更することとなるような行為の停止又は禁止の命令に従わなかつた者
第百七条の五 法人の代表者又は法人もしくは人の代理人、使用人その他の従業員がその法人又は人の業務又は財産の管理に関して前五条の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対し、各本条の罰金刑を科する。

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