身近な感染症
感染症とは、細菌やウイルスなどの病原体が体内に入り、いろいろな症状を起こす病気のことです。
病原体を持っている食品や動物から感染するものもありますが、ヒトからヒトにうつる感染症はより身近で学校や地域で流行することがあり、注意が必要です。身近な感染症を正しく理解し、予防方法を身につけましょう。
予防のポイント
- 正しく手を洗いましょう。
- マスクを付けるなど、咳エチケットを守りましょう。
- バランスのとれた食事・適度な運動や睡眠、予防接種などで抵抗力を高めましょう。
- 体調が悪い時は不要な外出を避け、早めに休むなど感染を広げないよう心がけましょう。
流行しやすい感染症には次のようなものがあります。
麻しん(はしか)
どんな病気?
麻しんウイルスにより空気感染する病気です。大変感染力が強く免疫のない人が感染すると、ほぼ100パーセント発症すると言われています。
風邪のような症状(熱・咳・結膜充血など)で始まり、その後に発疹が出ます。
感染させる期間は、症状の出る1~2日前から発疹後4~5日までと考えられます。潜伏期間は10~12日です。時に重症化します。
予防方法は?
予防接種が有効です。1歳児(第1期)と就学前1年間(第2期)の2回、麻しん風しん混合ワクチンを接種(定期接種)します。
定期接種の対象の方以外で麻しんの予防接種(抗体検査を含む)を希望する場合、任意接種となり、費用は自己負担です。
杉並区では麻しんの抗体検査および予防接種の費用助成は行っていません。
風しん
どんな病気?
風しんウイルスによっておこる急性の発疹性感染症で、流行は春先から初夏にかけて多くみられます。潜伏期間は2~3週間で、主に発疹、発熱、リンパ節の腫れなどの症状があらわれます。一度かかると、大部分の人は生涯風しんにかかることはありません。患者の飛沫(唾液のしぶき)などによって感染します。発疹のでる7日前から発疹がでたあとの7日位までの患者は感染力があると考えられています。感染力は、麻しん(はしか)や水痘(水ぼうそう)ほどは強くありません。
予防方法は?
予防接種が有効です。1歳児(第1期)と就学前1年間(第2期)の2回、麻しん風しん混合ワクチンを接種(定期接種)します。
トピックス
妊娠した女性(特に妊娠初期)が風しんにかかると、胎児にも感染し、生まれてくる赤ちゃんが耳が聞こえにくい、目が見えにくい、生まれつき心臓に病気があるなどの症状が現れる先天性風しん症候群を発症する可能性があります。流行を抑えるには女性だけでなく、成人男性の予防接種が重要です。
インフルエンザ
どんな病気?
毎年12~3月にかけて流行がみられます。インフルエンザウイルスによる感染症です。このウイルスは大きくA型、B型に分かれますが、A型には100種類以上のウイルスのタイプがあり、毎年異なるタイプが流行します。
症状
急な発熱(一般に38度以上)、咳、のどの痛みに加え全身倦怠感や関節・筋肉の痛みなどです。
一般的な風邪の症状と似ていますが、インフルエンザの特徴は全身に症状を引き起こすことです。そのため肺炎や脳炎などを引き起こすことがあり、時に重症となります。
潜伏期間
18~72時間です。
どのようにうつるか
患者の咳やくしゃみのしぶきにウイルスが含まれ、近くで吸い込んだ人が感染(飛沫感染)します。また、患者の手についたウイルスがドアノブやつり革などを介して、他の人にうつることもあるようです。
一般的に、発症の1日前から発症後3~7日間は感染性があると言われています。
受診先に迷った場合の問い合わせ先
- 杉並区急病医療情報センター 電話:03-5347-2252又は#7399
時間:平日夜間 午後8時から翌日午前9時(土曜日・日曜日・祝日・年末年始 午前9時から翌日午前9時) - 東京都医療機関案内サービス(ひまわり) 電話:03-5272-0303
時間:24時間年中無休
(注)夜間休日に受診する際には、重症患者への対応中や急病診療対応が難しい症状の場合もありますので、必ず事前に電話で受診についてご確認をお願いします。受診の際は、健康保険証・その他の医療証(いずれもコピー不可)を必ず持参してください。
かかったときに気を付けることは?
医療機関の受診など人と会うときには、かならずマスクをつけましょう。熱が下がって症状がなくなった後も、2日間は自宅療養しましょう。
予防方法は?
もっとも簡単で重要な予防方法は十分手を洗い、自分にウイルスをつけないことです。
マスクはウイルスを吸い込むことを完全には防げませんが、のどの湿度を保つなどの効果は期待できます。ウイルスは乾燥している方が活動が活発になるため、部屋の湿度を保ちこまめに換気をしましょう。
ワクチンは重症化予防に効果があり、流行期の前(11月ころ)に接種するとよいでしょう。
流行期には人ごみへの外出を控えることも、予防に有効です。
感染性胃腸炎(ノロウイルス)
どんな病気?
胃腸炎をおこす原因は、ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスなどさまざまですが、感染が広がりやすいのはノロウイルスです。感染力が強く、少しのウイルスでも感染し、集団生活の場で時に大流行をおこします。
症状は嘔吐と下痢、腹痛、発熱などです。子どもは嘔吐が多く、大人は下痢が多いようです。症状は激しくても重症になることはまれで、たいてい2日くらいでおさまってきます。
腸の中でウイルスが増えるため、便や嘔吐物にウイルスが多量に含まれます。症状がおさまった後もしばらくウイルスが便に排泄されると考えられており、その間は他の人に感染させる可能性があります。そのため調理や配食・配膳の仕事に携わらないことが必要です。
潜伏期間は12~48時間です。
予防方法は?
ウイルスを持った二枚貝を加熱を十分せず食べると感染します。食品は中心部が85~90度で90秒以上の加熱をしてください。
嘔吐や下痢をした場所には多くのウイルスが残っています。正しく処理をし、塩素系消毒剤を適切に薄めて十分に消毒をしましょう。
感染の予防には十分な手洗いと適切な消毒がもっとも大切です。手洗い方法、汚物の処理の仕方、消毒の方法などは以下を参照してください。
杉並区保健所保健予防課資料
東京都保健医療局資料
- ノロウイルスによる感染性胃腸炎・食中毒に注意(外部リンク)
- 防ごう!ノロウイルス感染(外部リンク)
- 防ごう!ノロウイルス食中毒(外部リンク)
- 社会福祉施設等におけるノロウイルス対応標準マニュアル(第3版)(外部リンク)
- 社会福祉施設等におけるノロウイルス対応標準マニュアルダイジェスト版(外部リンク)
- 社会福祉施設等における感染症予防チェックリスト(外部リンク)
- 学校等における感染症予防チェックリスト(外部リンク)
O157(腸管出血性大腸菌)
どんな病気?
激しい腹痛と頻回の水様便、時に血便もみられます。合併症を起こすと命にかかわることもあります。時々ニュースなどでも耳にしますが、O157というのは腸管出血性大腸菌という菌の種類のひとつで、同様の症状をおこすO26、O111 などの種類もあります。
加熱の不十分な牛肉などを食べて発症することが多いのですが、菌を持った人が調理に携わったり、肉から他の食品に菌が付いたりして感染することもあります。菌は患者の便と一緒に排泄されますが、時に症状がほとんど出ないで菌を持っている人もいます。
潜伏期間は平均3~5日、1週間以上のこともあります。
予防方法は?
食品を十分加熱(中心部温度85度~90度、90秒以上)して食べることが重要です。とくにひき肉料理や成型肉のステーキなどは、中心部の加熱が不十分だと菌が生き残ることがありますので、注意が必要です。
排便後や調理の前にはよく手を洗うなど、基本的な予防方法が有効です。
トピックス
新鮮な食べ物にもさまざまな病原体が潜んでいることもあります。また、加熱したつもりでも箸や食器を介して感染することもあります。焼肉やバーべキューなど生肉を調理しながら食べる時に、生肉に触れた箸や食器で焼いた肉や野菜をさわると、せっかく焼いた肉や野菜に菌がつくことがあります。生肉を触る箸などは決まったものにし、口に入れる箸とはきちんと分けましょう。
百日咳
どんな病気?
最初は風邪のような症状で始まり、1~2週間のうちに咳が強くなります。典型的な症状では、長い咳き込みの後に大きく息を吸い込む咳発作が見られます。息を吸い込む時に「犬の遠吠え様」「笛声」などと言われる音が聞かれます。小さいお子さんでは無呼吸発作や痙攣をおこすこともあります。
風邪症状のときが感染力が強く、咳に含まれる菌を吸い込んで感染します。潜伏期間は通常5~10日です。
年長児や大人の場合、典型的な症状が見られず診断が遅れることもあります。咳だけが続くような時は診察を受け、周囲の人への感染を防ぎましょう。
予防方法は?
乳児期の予防接種が有効です。四種混合ワクチン(DPT-IPV)に百日咳の成分が含まれています。
トピックス
DPTワクチンが普及したことで乳幼児の患者は減少しましたが、近年、20歳以上の成人患者の割合が増加しているので注意が必要です。
水痘(水ぼうそう)
どんな病気?
水疱-帯状疱疹ウイルスによる感染症で9歳以下の発症が多く、冬から春にかけて流行が見られます。症状は発熱と全身の発疹で発疹は水疱になります。水疱が接触したり、患者の咳やくしゃみを吸い込んだりして感染します。潜伏期間は2~3週間です。
予防方法は?
予防接種が有効です。満1歳から3歳になるまでの間に2回、水痘ワクチンを接種(定期接種)します。
帯状疱疹(たいじょうほうしん)
どんな病気?
水泡-帯状疱疹ウイルスによる皮膚疾患です。症状は、水疱(すいほう)がみられる2~3日前から痒みや痛みを感じるようになり、1週間程度経つと水疱の多発や発熱、頭痛といった症状がみられることもあります。通常は2~4週間で皮膚症状が治まります。
初めて水泡-帯状疱疹ウイルスに感染したときに、水痘(水ぼうそう)として発症し、多くの場合、水痘は子どもの頃に発症し1週間程度で治りますが、治癒後もウイルスは体内に潜伏しています。その後、加齢やストレス、過労などさまざまな要因でウイルスに対する免疫力が低下すると、潜伏していたウイルスが再活性化し、帯状疱疹として発症します。
帯状疱疹が人にうつることはありませんが、水痘にかかったことがない人にうつる可能性があり、その場合は帯状疱疹ではなく、水痘として発症します。
予防方法は?
免疫力が低下しないように、食事のバランスに気をつけ、適度な運動と十分な睡眠を心がけるなど、普段から体調管理に努めることが大切です。50歳以上の方は、水痘ワクチン又は乾燥組み換え帯状疱疹ワクチンを接種することで、発症予防・重症化予防が期待できるとされています。
流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)
どんな病気?
ムンプスウイルスによる感染症で、15歳以下の85パーセントは一度はかかると言われています。4~5歳が好発年齢です。症状は発熱、倦怠感などと共に耳の下の耳下腺が腫れて痛みが出ます。感染性のある期間は耳下腺が腫れる7日前から腫れた後8日間と言われており、唾液を介して感染します。潜伏期間は2~3週間です。
予防方法は?
予防接種が有効です。区では満1歳から小学校就学前(3月31日)までに1回、予防接種(任意接種)の助成をしています。
トピックス
合併症を起こすことがあり、とくに成人男性では患者の20~35パーセントに精巣炎を起こすことがあります。両側の精巣に炎症をおこすと不妊の原因になることもあります。
細菌性髄膜炎
どんな病気?
ヒトからヒトには感染せず、とくに流行や季節性は認められません。原因になる菌は多くありますが、生後3か月以降ではインフルエンザB菌(Hibヒブ)、肺炎球菌が多くなります。成人では肺炎球菌によるものが多いと言われます。
発熱、頭痛、嘔吐が三大徴候で、急激な悪化をみるため、とくに小さいお子さんの場合は、すぐに受診が必要です。
劇症型溶血性レンサ球菌感染症(A群溶血性レンサ球菌)
どんな病気?
レンサ球菌による感染症です。通常は感染しても無症候のことが多く、ほとんどは咽頭炎や皮膚の感染症にとどまります。しかしまれに通常は細菌が存在しない組織(血液、筋肉、肺など)に菌が侵入し、急激に症状が進行する重篤な状態となることがあります。そのため「人食いバクテリア」と呼ばれることがあります。
初期症状は、発熱や悪寒、四肢の疼痛や腫脹、創部の発赤などです。進行すると筋肉周辺組織の壊死を起こしたり、血圧低下や多臓器不全からショック状態に陥り、発病後数十時間で死に至ることも少なくありません。
予防方法は?
傷は清潔に保ち、創部に発赤や腫脹、痛み、発熱など感染の兆候が見られた場合には、すぐに医療機関を受診してください。
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関連情報
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杉並保健所保健予防課感染症係
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